最近の収穫(深井史郎『恐るるものへの風刺』)

 

 先日、有給をとって東京へ遠征した。

行先は神保町。目的は古書購入。この街は日本で最も古書が集まる地域で、ここに無ければ諦めようという思いで私は足を運んだ。

古書購入といっても、細かく言うと目的は二つに分かれていた。

一つ目は英文学関係の古書購入。友人(作家志望)が、彼のブログで紹介していたアメリカ詩の原文を見つけることだった。作者名や生没年はわかるが、まったくネットでは検索にひっかからない。友人に直接尋ねればいいだろう、と思われるかもしれないが、それができない。それが友達以上恋人未満の関係にある場合のプライドというものなのだ。

未訳の文芸作品を紹介するということは、大いに価値がある。そもそも、翻訳の使命とうのはそこにあると思うのだが、原著の紹介(作品の中身とはまた別の情報)をしてもらいたいという気持ちが訳者に対して湧いてくる。原文と訳文を見比べながら鑑賞できれば、作品に対する理解も深まるだろうし、何より翻訳者の実力を知ることができる。作品の中身さえ伝わればいいわけではないだろう。その作品を生んだ著者や成立年代背景、関連する情報を伝えて読者の視野を広げていく所までが翻訳者に求められるのではないかと、生意気ながら考えている。

自分が翻訳する場合は、ぜひとも作品のソフトとハードの両面を読者に提示して勝負したいと思う。

 

そして神保町に行った目的の二つ目というのが、音楽書の購入。この街には音楽書に関して抜群の品ぞろえを誇るK書店という本屋がある。そこに無ければ神保町で見つけるのは諦めることにしている。(といっても、今回は買いたい本を決めたうえで足を運んだわけではないが)今回もK書店に行き、棚とにらめっこをした結果一冊を購入。

深井史郎『恐るるものへの風刺-ある作曲家の発言』(音楽之友社)だった。

深井は戦前から戦後にかけて活躍した秋田出身の作曲家。メジャーなところで言えば「鳩の休日」という音楽の作曲を手掛けた。

彼は作曲家であると共に、文筆家であった。その活動の軌跡を本の中で垣間見ることができる。深井は同業者である他の作曲家に対して深い理解を示していた。

だからこそ文章で論じるのも達者であるということなのだろうが、関心したのがイタリアの作曲家アルフレッド・カゼッラに関する文章だった。詳しくは多くの方々にも実際に目を通していただきたいので書かないが、自身が作曲家であるからこそ書くことができるのだろうか、と到底私には論じることができない領域で考察をしていた。

なんとも読み応えのある本なので、繰り返し読んで深井の思考回路(というか文体)を吸収したいと思う。

そんなこんなで神保町探索はなかなか良い収穫を得て終わった。